Polynesian Samoaポリネシアン サモア

ポリネシアの中で唯一トライバルタトゥーの伝統を今日まで絶やすことなく守り抜いて来たのがサモアです。イノシシの骨を削って針にし、男性用のタトゥーデザインは『ペア』と呼ばれ、線紋様が帯状に折り重なるようなパターンが独特の雰囲気を醸し出しています。

ポリネシア地域におけるトライバルタトゥーカルチャーは、すべてそのルーツをサモアとトンガに持っています。古代サモアではタトゥーは宗教儀式と戦争に深く関わるものとして社会的に重要な位置にあり、それを施術する者は世襲によって定められた特権的な一族に限られていました。現在もその伝統を連綿と受け継ぎ続けているのがスルアペ家の人々です。

伝統的なサモア戦士のトライバルタトゥーはペア(pe`a)と言い、ウエストから膝下までをカバーするスパッツ型の形に定められたものです。女性の場合は手と脚に花のような幾何学デザインを彫るのが伝統的です。現在は動物の骨を加工して施術の針としているようですが、本来もっともそれに望ましいのは儀礼的重要性から人間の骨だとされており、それを鍬のような器具に取り付け、木槌でリズミカルに叩いて使用します。タトゥーの語源であるポリネシア語のタタウはこの叩きの動作のことを指しています。まさにポリネシアトライバルタトゥーの祖として、そしてタトゥーの祖としてサモアは位置づけられているということです。

さらにそればかりではなく、1980年代から始まったポリネシア諸部族のトライバルアイデンティティ復興運動は、各地に移住したサモア人コミュニティーから発信されたという経緯があり、それによって160年以上も死んでいた各地のトライバルタトゥーが復活したわけですから、救世主でもあると言えるでしょう。

ちなみにペアとはサモア語でコウモリのことを表します。伝統のスパッツ型のトライバルタトゥーもまたその名で呼ばれるのは、見かけが似ているからとのことで、現地の人のイメージによるとコウモリが羽をたたんで休む姿に見えるのだそうです。ちょうど男性器部分が顔に相当する感じということです。まあ、僕は何度見てもその感覚はよく分りませんが。歴史上のある時点ではコウモリに似ていたのかなぁ、などと感じるのみです。

普段、スタジオでカウンセリングをしていると、非常にしばしばサモアンタトゥーの意味を訊かれます。だいたいは各柄と意味との相関についての質問なのですが、しかしそれを以てサモアトライバルに対する理解としてしまうのはあまりにその場しのぎでお粗末というか、本末転倒な気がしています。それは本来もっとはるかにがっしりとした骨組みの世界ですから。幸い、最近、フルサイズのペアのオーダーが一つ入り、概ね伝統的な構図に即しているラフスケッチが出来たので、それを引き合いにしてペアの構造と世界観をごく簡単に紐解いてみましょう。特定のモチーフを記したところは、そこにそれが来るのが定型になっているということです。エリアと記した場所のボリュームとパターンはそれぞれであり、そこに各個人の情報が盛り込まれると考えてください。

ペアとはつまり「男塾」の修了証なんですね。

引用
著書:「traibal tattoo designs from the americas 」出版:mundurucu publishers
著書:「traibal tattoo design」出版:the pepin press
著書: 吉岡郁夫「いれずみ(文身)の人類学」出版:雄山閣

参考文献
著書:「THE WORLD OF TATTOO」Maaten Hesselt van Dinter著 KIT PUBLISHER
著書:「世界民族モノ図鑑」明石書店
著書:「EXPEDITION NAGA」 著者:peter van ham&jamie saul 出版:antique collectors, club
著書:「MAU MOKO The World of Maori Tattoo」Ngahuia Te Awekotuku with Linda Waimarie Nicora
著書:「縄文人の入墨」高山純, 講談社
著書:「TATTOO an anthropology」MAKIKO KUWAHARA, BERG
著書:「GRAFISMO INDIGENA」LUX VIDAL, Studio Nobel

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